2004/03/31 (Wed) 速記雑話 応用速記術の秘訣
 本山桂川著「応用速記術の秘訣」(東京 崇文堂発行)は大正14年12月1日に初版が発行されております。
 その後、昭和16年4月25日に第12版の発行を確認しております。
 
 時代的な背景を考えると、大正8年8月22日から27日まで京都速記学校主催で「第4回 中根式速記法講習会」が京都の三条青年会館で行われております。
 
 東京で「中根式速記協会」の前身である「新日本速記学会」が設立されたのは昭和2年11月です。
 また「中根速記学校」の前身である「中根速記学院」が開校されたのは昭和4年7月です。
 中根正世著「通俗 中根式速記法」の初版は昭和2年11月15日ですので、ほぼ同時期に「新日本速記学会」が設立されたと推測できそうです。
 
 大正8年の年末に「京都速記学校」が閉校されているので、昭和4年7月に「中根速記学院」が設立されるまでは、中根式にとっては空白の期間になりますが、京都では森卓明先生が「京都速記研究所」を設立して中根式の指導をしている程度だと思います。
 東京に「新日本速記学会」が設立されるまでは中根式の活動は本拠地を関西方面に置いていた時代です。
 
 本山桂川著「応用速記術の秘訣」の内容は、清音、濁音、半濁音、長音、拗音、インツクキ法、加点インツクキ法、助詞、ラ行省略法、口語省略法、最大線、段落標です。本の中には「中根式」という文字が全く見当たりません。
 ラ行省略法、口語省略法は下段を使用しております。
 上段における「訓音換記法」はありませんし、中間小カギ法もありません。
 
 大正8年の「第4回 中根式速記法講習会」では、「上段」及び「ラ行短縮」として、楕円を線の間に書く逆記法が指導されております。
 
 本山桂川は本名かどうかわかりませんが、東京崇文堂から「謄写版印刷術の秘訣」「最新謄写版印刷術」という本も書いております。
 また東京 崇文堂では加藤瀧著「思ふまゝに書ける 最新速記術の学び方」を昭和8年5月18日に初版を発行しておりますが、昭和17年1月8日に改訂12版を確認しております。
 同じ出版社から同時期に「中根式」と「熊崎式系統」の本が発行されておりますが、この2冊を第三者的に比較をしても内容的には本山桂川の方が見劣りをします。
 
 中根正世著「通俗 中根式速記法」は昭和16年4月18日に40版まで確認しております。
 
 
2004/03/30 (Tue) 速記講座 特殊下段
 中根正世著「通俗 中根式速記法」では、「下段」は「ラ行省略」と「口語略字」に使用されておりますが、「特殊下段」という使い方があります。
 
 「ナル」は下段に「ナ」を書きますが、「ナラン」は下段に「ナん」と書くと「特殊下段」になります。
 「コレ」は、下段に「コ」と書きますが、「コレラ」を「コつ」と書けば「特殊下段」になります。「マスル」は「マつ」と書きます。
 「ナッタ」は、「ナ」に大カギをつけます。
 「ナッテ」は、「ナ」に小カギをつけると「特殊下段」になります。
 「ナロウ」は、「ナ」に頭部加点をします。
 下段における「ラ行省略」に小円、小楕円、大カギ、小カギ、頭部加点を使用したものを「特殊下段」と呼ばれております。
 
 「マスル」に使用している「小楕円」は、後に中根速記学校では「ル」の省略として、小楕円から大楕円へなります。中根速記協会機関誌「速記研究」の昭和16年3月号に発表されております。
 大楕円を逆記することによって「ル」の省略は「中段」で使用することができます。
 
 「マスル」の書き方は「小楕円」ですが、「オリマスル」などの変化形に使用する場合は、「ホマん」と小円を入れて書きます。図形的には「小楕円」ですので「空間」でなければいけませんが、「マスル」は「マつ」よりも「マん」の形で整理しておいた方が使いやすいと思います。
 
 中根洋子著「中根式 速記の基本教程」では、「下段」と「特殊下段」を一括して「下段」と呼んでおります。
 
 
2004/03/25 (Thu) PDF版「中根式速記法教程」について
 当サイトでは、特別期間限定でPDF版「中根式速記法教程」及び「中根式速記法教範/速記法指導編」をダウンロードできるようにしております。
 「中根式速記法教程」は速記学校/塾/教室の生徒用に作成しておりますが、各速記法則における説明は簡単にしております。
 また、各法則の文例は応用できるように掲載しておりますが、各法則を他の言葉に当てはめて利用できるようにしております。
 
 「中根式速記法教範/速記法指導編」の「速記法指導計画」には(教範○○〜○○P/教程○○〜○○P)という表現がありますが、これは各法則の内容が書かれているページ数です。
 「中根式速記法教範/速記法編」における速記法則は「中根式速記法教程」に準拠して作成しております。
 
 「中根式速記法教範/速記法指導編」の「速記法指導計画」では、速記法則の指導期間は6ヶ月間としております。この6ヶ月間は、私が中根速記学校本科生時代における速記法則の習得期間と同じように作成しております。
 
 1週6日間で、1日の授業時間は2時間で計算しております。これはあくまでも「実地指導」を前提条件として組んだものです。
 
 「中根式速記法教範/速記法指導編」の「速記法指導」では、各法則における指導のポイントを書いておりますが、「プロ用/指導者用」と「アマチュア用」は別に作成をしております。
 
 「アマチュア用」の「速記法指導」では、指導期間を限定しておりません。これは個人の習得能力に応じて作成しておりますし、速記法則は「軽装備」で設定しております。
 
 指導者用の「中根式速記法教範/速記法編」は、PDF版では12.0MBの容量です。B5版で267ページあります。
 「中根式速記法教範/資料編」は、PDF版で24.6MBの容量です。B5版で272ページありますが、中根式の指導者として覚えておかなければいけない最低必要限の内容を掲載しております。
 
 
2004/03/21 (Sun) 拾い読み 中根式速記法則研究の一方向
 中根速記協会機関誌「速記時代」(昭和33年4月号)に「国語の音標化に伴う 中根式速記法則の一方向」と題して中根速記学校の江森 武先生(故人)が下記のように書かれております。
 
 3月1日付読売は「国語の音標化」という見出しで、「衆議院の文教委員会では、近く国語の音標化に向かっての徹底的な簡素化について超党派的に決議案を提出する動きが具体化しようとしており、国語のさらに徹底した改革の機運を高めるものとして注目される」と報じ、これを口火としてその後相次いで日経、朝日、東京、毎日など各紙がこれの解説を掲載した。
 今少し詳しくこの動きをここに誌してみると、これは去る2月28日の衆議院文教委員会で大橋忠一、鈴木義男の両氏が「中共では音標化が実施されており、象形文字を使うのは日本だけになってしまうばかりではなく、国語の現状では学術の振興にも妨げになっている。また人類の共存や文化の交流の面からもぜひ音標化に向かって国語を改革すべきである」という趣旨の質問を行い、これに対して松永文相は「私も国語が非常に不便の多いことを承知しており、急速に改革を研究する」と答えており、この国語の音標化については前記大橋、鈴木両氏のほか、片山哲、高良とみ氏ら十数氏が「国語政策を話し合う会」を結成、3月下旬から正式に発足することになっているというのであるが、その運動方針は、戦後の言語政策を徹底させるよう政府に要求し、要するに将来はローマ字による音標化を目標に、差し当たり漢字を徹底的に少なくするというものであって、簡素化決議案の提出を機に、改革の気運を盛り上げ、これを超党派的に政治的に推進しようというものである。
 既に今日一般のマスコミにおいても新聞用語集とか放送言葉集とかあって、いたずらに漢文直訳的な言葉は、やさしいわかりよい現代口語に書き直し、言い直して用いるようになっているのであるが、さらに、この国語音標化運動が実現されるようになれば、国語の大きな変化とともに、我々の速記法則もまたそれに伴った幾多の新研究の歩が進められねばならぬことは当然であろう。
 国語の音標化までいかない現在においてすら、既に中根式の速記法則の「上段」、訓読したものを音読にかえて書いていく法則は当用漢字、教育漢字と漢字を制限されているきている今日、既に、その教授上において研究の必要が痛感されるのであって、例えば「頗る」を「ハ」、「徒に」を「トに」などと音読させて書かせることは、現在の高校生を対象にした場合など、無理があろう。
 また一方、やさしい、わかりよい言葉が努めて使われるようになった現在、法則それ自体の簡素化も行われて、学習者の負担が次第に軽くなっていく傾向もあり、例えば中根式の「連続交差法」で処理している「枚挙にいとまもない」「百尺竿頭一歩を進め」とかいった類の言葉も、最近は、ほとんど国会会議録などにさえ見当たらず、ましてや日常の新聞にはもう死語となった感さえある。最近私の目にとまったもので、毎日新聞3月1日阿部真之介氏の「土曜評論」の中で「数えるにいとまかもない」という、しかもやさしく言い直したものが1つ用いられてあったが、珍しいなと思うほどにまでなってきた。こうした傾向は、最近における速記教育において、既に死語化しつつあるところのこのような言葉に対する法則の必要性も自然次第に薄れつつあり、速記普及の上からも、法則そのものが簡素化されていくことは、何と言っても喜ばしい現象であると思っている。ここには紙面の都合上、詳説できないのが残念であるが、国語改革に伴う我々の今後の研究分野の一方向を提起してみた。
 
と書かれております。漢字の簡素化と言われてから45年以上経っておりますが、当用漢字という言葉がなくなったぐらいで使用する漢字が余計にふえたような気がします。国語の音標化は全然進んでいないようです。
 
 速記法則は、言葉の変化とともに進化を続けております。
 
 
2004/03/13 (Sat) 速記文字の鑑賞 加点インツクキ法
 「速記資料館」に「加点インツクキ法」を掲載しております。
 
 速記雑話「世界の速記サイト」にピットマン式のサイトを紹介しておりますので、中根正親先生の「加点インツクキ法」と比較することをお勧めします。
 
 ピットマン式と中根式は図形的にも似ておりますので、速記文字の鑑賞ができると思います。
 
 中根式関係者は、ピットマン式に哀愁を感ずると思います。
 特に中根式の指導者は、ピットマン式の原著を読めなくても目を通して、原著の1冊ぐらいは手元に置いてもらいたいと思います。
 
 ピットマン式の本は、日本語で解説されているものもあります。
 津山千鶴子編訳「やさしい英文速記 基礎編」(pitman 2000 SHORTHAND)蝸牛社 昭和57年9月16日初版発行
 ピットマン式の法則をわかりやすく説明しております。
 
 その後「中級編」と「上級編」が発行されたかどうか確認しておりません。
 
 
2004/03/11 (Thu) 速記雑話 世界の速記サイト
 最近、速記仲間から「世界の速記サイト」を幾つか紹介していただきました。
 その中で、「北の道楽おやじ」のお薦めサイトを紹介します。
 
 http://pitmanshorthand.homestead.com/BasicsofPitman.html
 ↑イギリスのピットマン式サイトです。基礎講座です。
 
 http://www.geocities.com/shorthandshorthandshorthand/
 ↑アメリカのグレッグ式サイトです。
 
 http://www.steno.ch/htm/110.htm
 ↑ドイツの統一式サイトです。PDFファイルつきです。
 
 Windows で、海外の「速記サイト」を閲覧する前に「エンコード」の設定で「西ヨーロッパ言語」にチェックを入れます。
 「エンコード」の設定をしないと「文字化け」が発生しやすくなります。
 
 海外のサイトを見終わったら、もう一度「エンコード」を「日本語(指導選択)」をチェックしておきます。
 「エンコード」の設定を忘れたら「文字化け」をしますので要注意です。
 
 
2004/03/10 (Wed) 速記雑話 速度の表現
 ある高校の速記部の練習中に上級生が1年生にいわく
「これから400字の速度を読むからノーミスで書け」
「先輩、冗談ですよね」
「おまえ達は400字も書けないでどうするんだ」
「1分間に400字なんて無理です」
「おれは1分間に400字とは言ってないぞ。10分間に400字だ」
「?」
 
 実際にありそうな話ですね。
 
 昔は、検定試験が10分間朗読でしたので、速記の速度をあらわすときには3,200字とか2,900字という表現を使用しておりました。
 
 最近では、3級以下の検定試験は5分間朗読ですので、分速○○字という言い方をするようになりました。
 
 昭和40年ごろに、文部省認定社会通信教育 早稲田速記講座「速度練習レコード」総合盤という、ソノシート(LP・ 33 1/3回転)がありました。
 その説明の中に、
 速度何字ということは、10分間に朗読する漢字・仮名まじり文が何字ということです(句読点は数えません)
 
 練習問題文にも速度の表示は
 練習問題 速度1,000字/朗読時間1分30秒
 練習問題 速度1,200字/朗読時間1分
 練習問題 速度1,500字/朗読時間2分
 練習問題 速度1,700字/朗読時間2分
 練習問題 速度2,000字/朗読時間3分29秒
と書かれておりました。
 
 昭和44年ごろのワセダ速記講座「速度練習編」にもソノシートがついておりましたが、
 「第10回課題レポート提出」
 レコード1の練習が済んで、分速80字(10分間速度800字)が自信を持って速記できるようになったら、第10回の課題レポートを提出してください。
 
と書かれております。
 
 昭和41年5月31に日社団法人日本速記協会から「文部省制定 速記技能検定試験 受験の手引き」が発行されております。
 
 分速○○字を基準として○分間続けて朗読したものを速記できる。
 
と書かれております。
 
 
2004/03/05 (Fri) 速記雑話 速記の本がないというけれど……。
 最近は速記関係の本が少なくなりました。古書店でもなかなか出てきませんが、速記を学びたいという人はおります。
 
 速記の本がないから、「速記の学習ができない」とも言われております。
 
 しかし、速記の通信教育が完全になくなったわけではありません。出版社から「通信教育ガイド」が年度版で発行されております。
 
 速記を学習しようと思えば、幾らでも学習方法はあります。
 速記サイトでは、簡単なテキストが掲載されておりますから、速記の学習はできます。
 
 また速記サイトには「質問箱」や「掲示板」がありますし、速記に関する質問等も受けつけております。
 
 速記文字をスキャナで読み込ませて「添付ファイル」として直接質問者へ回答することもできます。
 パソコンとスキャナを有効に利用することです。
 
 速記の本がなければつくればよいだけの話です。パソコンで、テキストなどが容易に作成ができますし、速記文字を書き入れたら簡単にでき上がります。
 
 現在では速記の本を「出版社から発行する」という発想ではなく、でき上がったテキストをコピーするか、PDFファイルにしておく方法もあります。
 
 文書をPDFファイルに変換する方法には、次の2つがあります。
 
1.紙の文書をスキャナで読み込ませて画像ファイルにして、画像ファイルをPDFファイルに変換する方法です。
 古文書などの手書き資料、古い印刷物等。
 
2.ワードや一太郎などの文書を、そのままPDFファイルに変換する方法です。
 
 PDFファイルはパソコンの「OSやアプリケーションに依存しないフォーマット」で環境に左右されず閲覧ができます。最大の長所はファイルサイズと印刷品質です。
 
 速記のテキストを作成するかしないかは、指導者の速記に対する情熱次第です。
 
 
2004/03/02 (Tue) 速記雑話 困った先生
 高校時代に「商業法規」という科目があり、黒板に一杯板書するタイプの先生がおりました。
 
 高校3年生の10月初旬ごろ、商業法規の先生から「速記を使うな」と言われました。
 
 理由は「みんな苦労をしてノートをとっているのに、おまえだけ速記で書いて楽をするのはけしからん」ということです。
 私に言わせると「苦労?して速記を覚えたんだから、授業中のノートは速記で書いて楽をする」「速記を知らない方が悪い」という考え方です。
 その日は仕方がないので国字でノートを書きました。
 
 私は、通信教育修了後に中根速記学校のE先生の紹介で1週間に1回、T先生の自宅で速記の練習をしておりました。
 T先生に相談をすると、中根正雄著「即席速記法」(昭和41年1月20日発行)という本を見せていただき「中根式の人なら、説明をしなくてもわかります」と言われました。早速お借りして10日間で写真以外の部分を書写して覚えました。
 
 「即席速記法」は、その後「簡易速記法」と名前が変わり現在は「スピードメモ法」と言われておりますが、B6版で62ページの本です。
 当時は、まだコピー機が普及していなかった時代です。
 
 見た目は平仮名と片仮名を使用しておりますが、速記法則でできております。
 
 商業法規の先生は「苦肉の策でカナで書いている」と思ったようです。
 
 よい方に解釈すると「即席速記法を学習する機会を得た」ということになりそうです。
 
 「速記」を覚える場合には、本を読むよりも、本を1冊書写する原始的な方法で、学習成果を発揮する場合があります。
 
 特に、私の場合は「授業中のノートぐらいは楽に書きたい」という必要性があったからです。
 ちなみに他の科目は、符号速記の中根式を使用しておりました。
 
 「商業法規」は、卒業と同時に忘れてしまいましたが、「即席速記法」だけは現在でも覚えております。
 
 
2004/02/28 (Sat) 速記雑話 かみ合わない会話
 速記学校研究科生時代に、同期生との会話で、
 
「そろばんの3級よりも速記の3級は楽だね」
「小学生でも3級はとっているけど」
「高校時代にはそろばんの6級に落ちているんだ」
「速記の方がよほど難しいと思うけど」
「速記の方が簡単だと思うけどね」
 
 その会話を聞いていた先生は、ニヤリと笑っていただけです。ちなみにその同期生は事務の仕事をしておりました。
 私には、そろばんの才能がなかっただけの話ですが……。
 今は「電卓」で簡単に計算ができるようになりました。
 
 高校時代の2年間は「商業簿記」と「計算実務」で悩まされました。当時、文部省の高等学校学習指導要領では商業科目の中に「速記」もありましたが、授業で「速記」があれば楽しかったと思います。
 
 何の分野でも、その人の向き不向きがあるという例です。